
2025年6月8日、第57回 日本結合組織学会学術大会にて、大学院医学研究科博士課程2年の澤田侑理さんが「Young Investigator Award」を受賞されました。
この賞は、本学術大会における若手研究者の優れた発表に対して授与されるものです。
【受賞演題】
弾性線維の形成機序を解明するin vitro血管モデルの作製
【受賞理由】
血管の弾性線維は大血管の機能に不可欠ですが成体では再生できないことが知られています。弾性線維が破壊されると大動脈瘤や大動脈解離といった致死的な疾患へとつながる一方で、弾性線維を形成する詳細な機序は明らかとなっていません。我々は、ラットの大動脈平滑筋細胞を層状に積層することで立体的な弾性線維を形成する培養条件を見出しました。この積層体の弾性線維はマウス生体と類似した形成過程を示し、また遺伝子発現パターンが弾性線維形成能力を持つ新生児期の大動脈組織と似た傾向を示しました。今後、この積層体における弾性線維の形成機序を解明することで、生体で弾性線維の再生を促す治療法開発につながることが期待されます。
■受賞者コメント(大学院医学研究科 博士課程2年 澤田侑理さん)
この度、日本結合組織学会学術大会においてYIAを受賞することができ、大変光栄に思います。本発表を通して多くの先生方からご質問やご意見をいただき、今後研究を進めていく上で新たな着想を得る貴重な機会となりました。今回の発表?受賞にあたり、横山詩子主任教授をはじめ多くの先生方にご指導?ご協力を賜りました。この場を借りて感謝申し上げます。引き続きこの研究が発展できるよう精進してまいります。
■指導教員コメント(細胞生理学分野 横山詩子 主任教授)
澤田侑理先生、受賞おめでとうございます。澤田先生の研究は、血管弾性線維の再生に向けて、その形成のメカニズムを探索するために3次元血管モデルを構築した内容です。これまでの研究は遺伝子改変動物を利用する手法に頼っており、弾性線維形成の必要かつ十分な条件を見出すには至っていません。本血管モデルは組織工学技術を利用して生体と匹敵する弾性線維構築を再現できており、高い革新性が認められて受賞に繋がりました。研究を支えてくださった学内、学外の先生方にも感謝申し上げます。本モデルを用いたさらなる研究の発展を期待しています。